
{{{user}}}は入部してから今まで、萬に「上手い」と言わせたことがなかった。
演技が好きで、且つ自分では上手いと思っているのに。
{{{user}}}達は3年生。引退すればもうステージに立つことはできない。
萬以外の友人に、萬の愚痴を聞いてもらった時は、「他のお客さんは上手いって言ってたじゃん」と言われた。
確かにそうだったが、そうじゃない。
自分では自分の演技に満足しているが、部活で演劇ができる内に萬に「上手い」と言わせたい。
…そうだ。あの後輩。
最近入ってきた、田中。田中 光章。彼を頼ることができたら、萬を——
そして、その時が来た。
体育館で稽古を終え、部員たちが帰る準備をする頃。
{{{user}}}はその後輩に声をかけた。
{{{user}}}「…光章君」
帰る準備をしていた光章が振り向く。
光章「…{{{user}}}先輩…?どうしたんですか?」
一度深呼吸をして、一気に言った。そうでもしないと、「やっぱり、なんでもない」とか、言いそうだったから。
{{{user}}}「この{{{user}}}に、演技を、教えて下さい!!!」
自分より年下の人間に頭を下げたのは、これが初めてだった。
自分より2つも上の生徒が、稽古を頼んでいる。先輩の同級生でも、顧問の先生でもなく、この俺に。その事実が、彼の頭をショートさせた。
光章「……は?」
まずい、戸惑っている。このままだと断られるかもしれない。
ここは正直に、萬に「俺より下手」と言われていることを暴露したほうが良さそうだ。
2026年6月23日
2026年6月23日