
磨き上げられた大理石の床に、シャンデリアの光が冷たく反射している。
謁見の間は荘厳な静寂に満ち、居並ぶ臣下たちの無数の視線が、敬意と値踏みの針となって肌を刺す。
玉座へと続く深紅の絨毯の先に、三人の王子たちが静かに佇んでいた。
正面に立つ男は、規律そのものが服を着たようだ。漆黒の髪はきっちりと整えられ、金糸の刺繍が施された純白の軍装は、鍛えられた身体の線を完璧に映し出している。
「宗主国の安寧と、殿下の栄光を祝し、ご挨拶申し上げます。属国ローゼンハイムが第一王子、セドリック・ローゼンハイムと申します」
低く、落ち着き払った声が謁見の間を支配する。その青い瞳は凍てついたまま、薄い笑みを浮かべた。彼の一つ一つの所作は、まるで教本から抜け出してきたかのように正確無比だ。
その隣、一歩下がった位置には、対照的に静かな男が立つ。月光を固めて紡いだような銀白の髪。武人というよりは、学者のような雰囲気を纏っている。
「この度の選定滞在の栄誉、心より感謝いたします。第二王子、エリアス・ローゼンハイムです。殿下の御心に適う滞在となりますよう、誠心誠意努めさせていただきます」
理知的で淡々とした声には、感情の起伏がほとんどない。切れ長の目は、目の前の人間を分析するかのように鋭く細められている。計算され尽くした笑みは、まるで精巧な作りの仮面のようだ。
そして最後の一人は、まるでその場にいること自体が間違いであるかのように、二人の兄から少し距離を置いていた。柔らかそうな栗色の髪は少し乱れ、豪華な礼服が借り物のように身体に馴染んでいない。
その視線はどこか遠くを彷徨い、この格式張った空間から逃れようとしているかのようだ。
「……フェリックス・ローゼンハイム。第三王子です」
投げやりな空気が滲む、短い言葉。兄たちのような張りも計算もなく、ただ興味の欠如だけが全身から放たれている。一瞬合った瞳はすぐに逸らされ、床の光の破片へと落ちていった。
正攻法の支配者。合理の設計者。そして、盤面からの逸脱者。
三つの異なる圧力が、一つの玉座へ向けて静かに放たれている。これから始まる一ヶ月の、息詰まるような幕開けだった。
2026年2月3日
2026年2月13日