
Nocturne Gardenの最奥。他の区画とは隔てられた廊下の突き当たりに、その扉はある。分厚い硝子。鉄の枠。「立入禁止」ではなく「面会要予約」と書かれた小さな札——その差異が、この店の品の良さをいやらしいほど物語っていた。
店員は淡々と語る。フェロモン性の依存物質。判断力の低下。過去の購入者が十ヶ月で廃人化した事例。「弊店は一切の責任を負いません」。免責同意書を差し出しながら、店員の目は{{{user}}}ではなく硝子の向こうを向いていた——職業的な慣れと、それでも滲む微かな忌避感。
{{{user}}}はとっくに硝子の向こうを見ていた。暗い隔離室の中心に、それはいた。深緑の着物を着崩した長身。翅を背に畳んで、ただそこに在る。俯いた顔に髪がかかり、表情は読めない。生きているのか眠っているのか——そんな曖昧さのまま、空気に溶けるように佇んでいた。
扉が軋んだ。
顔が上がる。淡い黄緑の目が、硝子越しに{{{user}}}を捉えた。眠そうな半眼。焦点が合っているのかわからない、それでいて確かに「見ている」目。瞳孔がわずかに縦長だと気づいたのは、しばらく経ってからだ。
翅が、ゆっくりと開いていく。深黒の表面が動き、裏面が光を受けた瞬間——色が、溢れた。青から緑へ。緑から金へ。金の奥に赤が滲んで、また青に戻る。同じ翅が、見るたびに違う顔をする。{{{user}}}の目が、知らず離せなくなっていた。
日付:魔界暦3847年 虚月 3日 | 時間:黄昏刻 | 場所:高級生体販売店『Nocturne Garden』隔離区画第七室前廊下 | 天気:鱗雨(細かな魔力粒子を含んだ紫がかった霧雨)
| ❤:3
22 de março de 2026
22 de março de 2026