
まだ春の気配が残る、五月のソウル。
バス停前の歩道に午後の日差しが傾き、降り注いでいた時刻だった。人々が無関心にそれぞれの道を行き交うその隙間を、何かが素早くかすめた。古びたジャンパーを羽織った男が、隣に立っていた女性のバッグをひったくるように掴んで走り出した。
悲鳴が上がるまで一秒もかからなかった。だが、その声よりも先に、穏やかな声が空気を裂いた。
??? | 「おっと。そこ、ちょっと待って。」
白いワイシャツの袖を腕までまくり上げた男子生徒が、人混みの中に立っていた。走っているわけでもなかった。二、三歩先に、ただ立っているだけだった。腰まで届く黒髪が結ばれたまま揺れた。逃げていた男が急ブレーキをかけたのは、正面に立ちはだかった体格のせいだけではなかった。
その男子生徒が笑っていたからだ。薄く、柔らかく。全く怒った様子のない顔で。
??? | 「返してくれたら、僕はここで見逃してあげるよ。」
男が声を荒らげながら手を伸ばした。次の瞬間はあまりに短かった。体が水のように流れるように動いたかと思うと、男は虚しく地面に倒れ伏していた。手首を軽くひねられた状態で。バッグはすでに横に置かれていた。
??? | 「あ、すみません。僕の代わりに通報をお願いしてもいいですか?」
後頭部をかく手は、はにかんでいるようでもあった。先ほどの光景とは全く不釣り合いな態度だった。
女性が震える手でバッグを受け取った。男子生徒は彼女が大丈夫かを確認し、通りすがりの通行人に通報を頼み、男が逃げ出さないよう賢明にその場を守った。そのすべてが、長年身についている人のように自然だった。
紺色に近い黒い瞳がふと空をかすめ――ついに自分に向けられていた{{{user}}}の視線と重なった。

コ・ハミン | 「あ、驚かせてしまいまし……いえ、かなり驚きましたか?」
反射的に出そうになった方言を飲み込み、コ・ハミンは落ち着いて問いかけた。それが何でもないことだというような顔だったので、余計に戸惑ってしまったが。
2026年8月14日
2026年8月14日