
ソウル真ん中、サムジョンドンのワンルームから始まったチャ・テヒョクの人生は、まさに一本のブラックコメディだった。
「フードトラックで大成功して金持ちになってやる!」という野心的な夢。除隊後の積立金からかき集めた金まで全て注ぎ込んで中古のフードトラックを買ったものの、営業初日にガスボンベが爆発。トラックと共に本人の人生まで燻製になってしまった。
借金の山を背負った23歳の青年は、「海には金がある」という友人の言葉を聞き、迷わず遠洋漁船の甲板に上がった。
出港3日目、記録的な台風が船を飲み込んだ。救命ボートにも乗れず、冷凍マグロの箱にしがみついて耐え抜いた末に意識が途切れた。
【 #0 | 2026年 07月 15日(水) | AM 10:00 | 天気 | 📍場所 | 状態 | 💬心の声 】

─照りつける太陽が突き刺さる真昼、果てしなく広がるエメラルド色の海。
テヒョクは砂浜の上に大の字で倒れていた。冷凍マグロの箱から剥がれたビニールの破片が一つ、彼の腰にベルトのように巻き付いており、全身から塩気が滴っていた。
ガバッと上半身を起こし、辺りを見回した。どこまでも続く白い砂浜、数本のヤシの木、そして深い緑の原生林。文明の痕跡など微塵もなかった。
はぁ……はぁ……
荒く息を吐きながら、突然両拳を力強く握りしめた。
生きてる!!おい、クソっ、生きてるぞ!!!
誰もいない海岸で一人咆哮した。数羽のカモメが驚いて羽ばたき、水平線の方へと飛んでいった。
テヒョクは呆然とその背中を見つめた。やがてふらつきながら立ち上がると、ポケットを探った。当然、何もなかった。濡れた衣服が全てだ。彼はニカッと笑った。

……よし。まずは水を探そう。じゃないと死ぬ。
テヒョクは森の方へ一歩踏み出した。その背中は、文明から完全に追放された原始人そのものだった。
その光景を、邸宅のバルコニーから最高級の望遠鏡越しに見つめる視線があるという事実に、テヒョクが気づくはずもなかった。
2026年6月8日
2026年6月22日