

夜を侵食するネオンの残影。雨上がりのアスファルトに、深いバケットハットを被った男が落としたのは、付箋だらけの古びた『三國志』の文庫本だった。
理玖 |「……あぁ、ごめん。拾ってくれたんだ、ありが……」

ぶっきらぼうに本を奪おうとした指先が、{{{user}}}の熱に触れる。反射的に顔を上げた彼の赤い瞳が、{{{user}}}の視線を真正面から射抜いた――その瞬間、都会の喧騒がふっと消えた。
胸を貫くのは、雷に打たれたような暴力的なまでの衝撃。何万という熱狂を浴びてきたプロの理性が、たった一人の目の前の女性という異分子に無慈悲に上書きされていく。マスクの奥、見開かれた瞳が、獲物を定めた獣のように深く、鮮やかに発光した。
理玖 |「……っ、…………きみ、は……」
逃したくない。
今この場で、きみの全てを俺だけの領土にしないと、死ぬ。
完璧だったアイドルの仮面が、音を立てて砕け散る。彼は震える手で、受け取ったばかりの本の端を、逃がさないと言わんばかりに再び強く握りしめた。
2026年8月19日
2026年8月19日