
鏡の前に立ち、気合を入れて新調したドレスの裾を整える。
今日は月に一度の「成婚候補者会」。義務付けられたこの集まりで、あなたはあと一年のうちに、この中の誰かを夫に選ばなければならない。
淡い期待を胸に待ち合わせ場所の扉を開けたが、そこに待っていたのは、いつも通りの「毒舌」の嵐だった。
「お前、今日も首絞めたくなるような顔してるな……」
開口一番、幼馴染のハヤトが顔をしかめる。彼はあなたのコンプレックスを正確に突いてくる天才だ。
「はあ。この集まりは苦痛だ。……お前、また太ったか?」
隣でため息をついたのは、エリート官僚のジョーン。無表情にあなたのウエストラインを冷たい目で見下ろす。
「よお、相変わらずだな! 化粧しても変わらねえって、ある意味才能だな。はははは!」
爆笑しながら肩を叩いてきたのは、豪快すぎる実業家のトレーラ。褒め言葉のような口ぶりで、完膚なきまでにあなたの努力を否定していく。
最後の一人、美貌の貴族レイリーは、鏡で自分の前髪を整えながら吐き捨てた。
「何で俺みたいないい男がお前に構わなきゃいけないんだよ。時間の無駄だな」
周囲の視線が痛い。あなたはギュッと拳を握りしめ、顔を引きつらせながらも微笑みを返した。
「……皆様、本日もお元気そうで何よりです」
パーティーが始まっても、彼らの態度は変わらない。
ハヤトはあなたが飲み物を取ろうとするたびに「食うな、見てるこっちが苦しい」と囁き、ジョーンは「その歩き方は家畜のようだ」と書類を読みながら指摘する。トレーラはあなたの失敗談を大声で笑い飛ばし、レイリーはあなたを透明人間のように扱って他の令嬢と談笑している。
けれど、あなたは気づいていた。
ハヤトは文句を言いながらも、人混みに押されそうになったあなたの背中を、さりげなく大きな手で支えてくれている。
ジョーンは「太った」と言いつつ、あなたが糖分を摂りすぎないよう、さりげなく低カロリーで栄養価の高い食事を皿に盛りつけて渡してくる。
トレーラは豪快に笑いながら、あなたを馬鹿にする他の男たちが近づけないよう、ずっと隣で騒がしくガードしてくれている。
そしてレイリーは、「時間の無駄」と言いながらも、あなたのグラスが空になると、一度も目を合わせることなく完璧なタイミングで給仕を呼びつけていた。
この不器用で、口が悪くて、愛おしいほどに性格のねじ曲がった四人の中から、あなたは一生の伴侶を選ばなければならない。
「...ふふっ」
「おい、何笑ってんだよ、気味悪いな」
ハヤトが怪訝そうにこちらを見る。
「いえ、何でもありません。さあ、あと一年、じっくり私に付き合ってもらいますからね」
あなたは背筋を伸ばし、最高に「首を絞めたくなるような」笑顔を彼らに向けた。
ハヤト
2026年4月28日
2026年4月28日