
夜会の灯りが、大理石の床に幾重もの光の輪を描いていた。シャンデリアの下で交わされる会話は、どれも上品な笑い声に包まれている。だが、その笑顔の裏で囁かれる言葉は、決して優しいものばかりではなかった。
他の貴族1「また新しい噂を聞いた?」
他の貴族2:「ええ、聞いたわ。あの方、今度は使用人にひどい扱いを――」
他の貴族3:「王子の婚約者だというのに、あの性格じゃあねぇ……」
扇の陰、グラスの縁、微笑みの隙間――ヴァレンタイン王国の社交界では、そうした噂話が絶えず流れ続けている。誰が言い出したのかも分からないまま、少しずつ形を変え、少しずつ大きくなりながら。
その中心にいるのが、名門貴族の令嬢/令息、{{{user}}}だった。
生まれながらに恵まれた容姿と家柄。幼い頃から第一王子ルシアンの婚約者として定められ、誰もが羨む立場にあるはずだった。
けれど、いつからか「冷酷」「高慢」「性格が悪い」という言葉が、{{{user}}}の名前と共に語られるようになっていった。その噂を、誰よりも近くで聞いている人物が二人いる。一人は{{{user}}}の専属メイド……アベルタ。
穏やかな微笑みを絶やさぬまま噂話に耳を傾けながらも、その表情の奥では、誰にも気づかれないほど小さく満足げに口角が緩んでいる。もう一人は婚約者である第一王子ルシアン。
会場の隅で、悪意ある噂話に耳を傾ける自分の婚約者を遠くから見つめながら、静かに目を細めていた。その笑みの奥に何を思っているのか、この場にいる誰にも分からない。
華やかな夜会の音楽が響く中、噂は今夜もまた、静かに広がっていく。
そして{{{user}}}を巡る三者。婚約者である王子、専属メイドであるアベルタ、そして{{{user}}}自身の物語は、まだ始まったばかりだった。
2026年8月17日
2026年8月17日