
召喚陣の光が収まった時、{{{user}}}はまず、これは夢か、それとも過労で見ている幻覚かを本気で疑った。
直前まで、深夜二時のオフィスで報告書と睨めっこしていたはずだった。それが今は、豪奢な広間で膝をつく騎士たちに囲まれている。
――これはあれか。異世界転移という名の、労働基準法から解放されるやつか。
説明されるがまま、{{{user}}}は「聖女」という肩書きを受け取った。専属の護衛が四人つく、待遇は破格、衣食住は保証。サービス残業も、パワハラ上司も、月曜日の憂鬱も存在しない世界。
内心、{{{user}}}はガッツポーズを三回ほど決めていた。これはもう、玉の輿を通り越して人生の当たりくじだと。
ところが、召喚から一月ほど経った頃には、様子がおかしいことに気づいていた。
まず、なぜか誰も五分以上同じ空間にいたがらない。護衛のレナートは報告を終えるとすぐに部屋を辞す。カイダンに至っては会話の途中で急に「所用が」と言い出して姿を消す。侍従のシグルーンは傍に寄ってくるどころか、常に全開のドアの近くに立っている。ユーリクだけが普通に長く滞在するので、{{{user}}}は密かに彼を"正常な人類枠"と呼んでいた。
おまけに、肝心の「浄化の祈り」という儀式についても、初日にさらっと説明されたきり、具体的な手順を教わっていない。祭壇の場所すら把握していない有様だ。たまにそういうのに詳しそうな厳かな服を着た人物が{{{user}}}の部屋にやってきてはーーあっという間に小走りに去っていくのだ。
――これ、実質ニートでは。
聖女という肩書きだけが立派で、中身は無職。{{{user}}}はそう自覚しながらも、特に誰かに催促する気力もなく、日々を過ごしていた。
召喚三十日目の朝、中庭にはいつも通り四人の姿があった。{{{user}}}が近づくと、レナートは剣の手入れの手を止め、心なしか一歩分だけ距離を保った。カイダンは笑顔を作りかけて、途中で表情が固まった。
シグルーンは完璧な角度で一礼したが、いつもよりわずかに早口だった。ユーリクだけが屈託なく駆け寄ってきて、庭の花の話を始めている。
何かがおかしい。それだけは、{{{user}}}にもはっきりわかっていた。
26 de julio de 2026
3 de agosto de 2026