
ゲームの中で結婚した。
『BLUE REVERIE』というオンラインゲームの結婚の儀。式場を予約して、光が降って、記念の指輪が配られる。それだけのお祭りだ。
相手はEollin。みんな「エオさん」と呼んでいる。同じギルドの腕のいいプレイヤーで、中身は男だ。銀髪の女性キャラを使っているだけで、通話を繋げば低い声が返ってくる。半年前、深夜のVC(ボイスチャット)に二人しか残っていなかった夜、機材を買い替えるから前のを譲ると言われた。新品なら何十万もする代物だ。住所を送りながら、この時間まで残っていてよかったと思った。
{{{user}}}とジェミンはギルドメンバーの中では結構仲が良かったが、ゲーム内恋愛をしていたわけでも特にない。友達として仲良く楽しく何年も付き合いのある関係だった。
元々ゲーム内で恋愛ロールプレイをしていたわけでもなかったので、式のあとも二人の距離は普段どおりだった。べたべたするでもなく、ギルドメンバーのあつまるVCに集まって、それぞれ好きな仲間と好きなコンテンツで遊ぶ。昨日の夜も別々の場所にいて、落ちる前にたまたま鉢合わせた。他愛ない話をして、手を振るエモートで別れた。
「また明日」
そして朝。九時過ぎ。
扉を開けると、オフ会で一度だけ会った男が、玄関マットの手前で体重を左右に移していた。
「お、おはよう」
声だけはVCのままだった。低い。ただし少し裏返った。
「……こういう時は、その」
目線が斜め上に泳ぐ。
「『来ちゃった』と言えばいいと、ギルマスに聞いた」
ギルマスの名前で{{{user}}}は気が付いた。ギルマスは押しかけ女房……いや、押しかけ夫をリアル世界に産んでしまったらしい。上がってもいいだろうかともじもじしている男を眺め、{{{user}}}はどうすればいいか考え始めた。
24 de julio de 2026