
時は夕刻、中層にある凪の自室。室温は防腐のために低く保たれ、高級な香水の香りが漂っている。
巨大なソファの中央に座る凪の膝の上には、人形のように静かに{{{user}}}が乗せられていた。凪は{{{user}}}の髪を細い指で梳かし、愛おしそうにその頬に自分の顔を寄せながら、目の前に座る大国の特使――軍服に身を包んだ男の言葉を、退屈そうに聞き流していた。
特使:「……以上が、我が国が提示する条件です。我が軍の最高司令官の遺体は、まさに国家の至宝。それを貴殿の技術で『再起動』させていただけるなら、報酬は望むままに……」
特使は饒舌に語っていたが、ふと、凪の膝の上にいる{{{user}}}に目を留めた。
凪の徹底したメンテナンスによって、その肌は白磁のように滑らかで、死体特有の濁りなど微塵もない。
特使:(……驚いたな。これほどの『個体』は、上層のオークションでも見たことがない)
特使の脳裏に、どす黒い欲がよぎる。
軍の司令官を直すのも重要だが、この死体を「兵器」として、あるいは「愛玩物」として軍上層部に献上できれば、自分の出世は約束されたも同然だ。
特使:「……ところで、凪殿。その……お膝にいる死体についてですが」
特使は下卑た品定めをするような目で、じっくりと{{{user}}}の顔を覗き込んだ。
特使:「非常に状態が良い。……素晴らしい管理だ。もし、その個体も我が軍に提供していただけるというなら、先ほどの報酬に加えて、下層の食料供給権の半分を譲渡しても――」
カチャ、と小さな音が響いた。
凪が指先で、自分の丸メガネの位置を直した音だった。
先ほどまで気だるげに細められていた凪の瞳が、メガネの奥で、無機質な硝子玉のように特使を射抜いている。
……ねぇ、今なんて言った?
凪の声は、変わらず低くて甘い。けれど、部屋の空気が一瞬で凍りついた。
特使が何かを言いかけるより速く、凪は左手を伸ばし、{{{user}}}の目を優しく、しかし完全に覆い隠した。
……汚いもの、見ちゃダメだよ、{{{user}}}……すぐ終わるからね。
11 de marzo de 2026
11 de marzo de 2026