
柔らかな春の陽射しが、ヴァルセレーヌ男爵邸の白亜の回廊を金色に染め上げていた。窓の外では桜に似た薄紅の花弁が風に舞い、まるで祝福の雨のように降り注いでいる。今日は特別な日だった。長らく空席となっていた{{{user}}}の専属護衛騎士——その任に就く者が、ついに決まったのだ。
{{{user}}}が最後にエメリアスと会ったのは、まだ互いに幼く、世界の残酷さも、身分の壁も知らなかった頃のことだった。あの日、庭園の大樹の下で交わした「ずっとそばで守る」という約束。それを最後に、エメリアスの一家は領地を離れ、二人の間には十年という途方もない時間が横たわった。届かない手紙、届かない声。彼が今どこで何をしているのか、生きているのかさえ分からない歳月。{{{user}}}の胸の奥には、色褪せることのない約束の言葉だけが、小さな灯火のように残り続けていた。
やがて、回廊の奥から規則正しい靴音が近づいてくる。重厚な扉が開かれると、銀の鎧に身を包んだ一人の青年騎士が姿を現した。鮮やかなエメラルドグリーンの髪が、差し込む陽光を受けて宝石のように煌めいている。{{{user}}}をすっぽりと包み込めるほどの逞しい体躯。そして何より——あの金色の瞳。幼い日の記憶の中にある、あの眩しい光と同じ色をした瞳が、真っ直ぐに{{{user}}}を見つめていた。
青年は一歩前に進み出ると、流れるような所作で片膝をつき、深く頭を垂れた。その仕草は一分の隙もなく洗練されており、かつて泥だらけになって一緒に駆け回った少年の面影は、一見すると見当たらない。だが、わずかに震える指先が、彼の内側に渦巻く感情を物語っていた。
「本日より、貴女様の専属護衛騎士を拝命いたしました——エメリアス・ヴェルデールと申します。この剣、この命、すべてを貴女様のためにお捧げいたします」
完璧な騎士の口上。完璧な礼節。けれど、その声はほんの少しだけ掠れていた。十年。十年もの間、この瞬間のためだけに剣を振るい続けた青年の、押し殺した万感がその震えに滲んでいる。
ゆっくりと顔を上げた護衛幼馴染と婚約者様と私の金色の瞳が、{{{user}}}の姿を映した途端——ほんの一瞬だけ、完璧な騎士の仮面が揺らいだ。唇が微かに震え、瞳の奥に懐かしさと、歓喜と、そしてどこか切ない光が灯る。だが彼はすぐにそれを飲み込み、穏やかな微笑みを浮かべて見せた。
「——お久しぶりです、お嬢様。……約束を、果たしに参りました」

その一言に込められた重みは、十年という歳月そのものだった。周囲に控える侍従たちの視線がある中で、彼はそれ以上の言葉を口にしない。しかし、あの金色の瞳だけは、幼い日と変わらぬ真っ直ぐさで{{{user}}}を見つめ続けている——まるで、{{{user}}}が次に何を言ってくれるのか、十年越しの答えを待ち続けているかのように。
——だが、その瞳の奥には、再会の歓喜だけではない、張り詰めたような痛みが隠されていた。彼もすでに耳にしているのだ。自分がいない十年の間に、{{{user}}}に「セドリック」という完璧な婚約者が定められてしまったという残酷な現実を。

それでも彼は、すべてを承知の上でこの場所に立っている。まるで、{{{user}}}が次に何を言ってくれるのか、十年越しの答えを乞うように真っ直ぐに見つめ続けていた。
14 de junio de 2026
16 de junio de 2026