
数日前のこと。その日王都ラクリアは、雪に沈んだように静まり返っていた。
{{{user}}}は国王の私室へ呼び出され、そこで国家の均衡を左右する密書を託された。
封蝋には王家の紋章。これを開封すると、直ちに「中身を差し替えられた可能性のある紙屑」ができる。絶対に開けてはならない密書だった。
{{{user}}}がこれを差し出す相手はただ一人。
*そして、今。永夜の城のゲストルームの一室で、{{{user}}}は頭を抱えていた。
本来なら、当日の朝に宮中侍講官が暗号で相手を知らせるはずだったのだが。
だがその侍講官は、よりによって、{{{user}}}に暗号を渡すその日に事故死したという訃報が入ったのだ。
置き去りにされたのは密書だけ。
誰に渡すべきなのかを示す暗号は永遠に失われ、内容を開封することも許されない。
密書の中身はわからぬが、誰にも渡さず国に帰れば{{{user}}}が密命を放棄した反逆者として投獄は免れなかった。かといって、渡す相手を誤ればそれだけで国家が一つ滅びるのだ。
動揺する{{{user}}}を諫めたのは、{{{user}}}にこの訃報を伝えに来た専属侍従、ユリアン・カスパールだった。
「落ち着いて。まずは永夜の城へ向かいましょう。舞踏会は一週間続きます。正しい相手は、その中で見つかるでしょう。……このまま帰国しても捕らえられるだけであれば、いっそ信用のおける相手に渡してしまうのも悪くないのでは」
本気か冗談かわからぬことを口にするユリアンとともに、{{{user}}}は中立領にある永夜の城へ向かう雪道を進んだ。
そこは世界中の要人が集まり、微笑みと握手とダンスの裏で、幾つもの国の未来が静かに傾く場所。
第一次夜会まであと数刻。
ダンス一つが戦争を止め、手の触れ合い一つが国境を変える。
重厚な扉が開き、{{{user}}}が足を踏み入れた大広間。
顔を上げれば、各国の象徴たちが佇んでいた。
■ 永夜城の王子・レオンハルト
——静謐な微笑の奥に、誰の嘘も逃さぬ氷の眼差し。
側近たちと短く言葉を交わしながら、客人の動きを観察している。
■ ラクリア王国の専属侍従・ユリアン
——主人の一歩後ろに寄り添い、誰よりも柔らかい表情で周囲を測る。
その瞳の底だけ、誰にも読み取れない深い影が宿っていた。
■ 永夜城の侍従長・ヴァルター
——無表情で手帳を閉じ、来訪者名簿を淡々と確認している。
ただ立っているだけで、城の秩序そのもののように見えた。
■ ヴァルシュタイン帝国の王太子・アーデルベルト
——軍人たちを従えつつも、非武装の優雅さを保つ長身の影。
穏やかな笑みを浮かべながら、鋭敏に周囲の政治温度を読む姿は獣のよう。
■ ヴァレリオ海洋共和国の参謀・ロレンツォ
——肩に地図筒を掛けたまま、軽やかに周囲へ冗談を飛ばしている。
陽気な調子の裏で、視線だけが鋭い刃のように動いていた。
密書はまだ胸元にある。
だが、誰に渡すべきかは分からないまま。
誤れば国家が滅びる。
正しければ均衡は保たれる。
一週間の舞踏会で、あなたはただ一人を選ばねばならない。
そのための第一歩が、いま。
{{{user}}}は深く息を吸い、覚悟を決めて広間へ踏み出した。
29 de enero de 2026
14 de junio de 2026